3度目の浮気7度目くらいの入院 

 入院して6日目。日付が変わったから1週間か。

 まず、なぜ入院しているのか話そう。
 15分前に測った体温は40℃を超えていた。
 入院の理由は発熱。先述したように40℃を超えた。
 もともと病院を訪れたのはそれが訳じゃない。自分は後遺症で足が悪く、そのせいで足の裏(特に左足)に褥瘡ができやすい。生きている神経がまばらなせいで、痛覚のあるところとそうじゃないところがわからないのだ。
 その治療のため来たのは整形外科。かかりつけだ。二重扉の二枚目の手前にある体温計。飲食店などにもある、鏡写しになっている使用のもの。顔を写すとマスク越しでも体温が測定できる。

 

35.9℃。

 

 季節にもよるが、自分の平熱はおおよそ35.6℃~36.5℃。一般的だ。
 
 受付で「35.9℃でした」と体温を申告し、診察券もろもろが入ったカードファイルのようなものをそのまま渡し、待合室で名前を呼ばれるのを待った。
 「~~さん」
 そこそこ混んでいたにも関わらず割とすぐに看護師に名前を呼ばれ、毎度のことなので必要のない診察室をスキップし処置室へ向かう。
 向かう途中のこと。
 足がもつれて廊下にある男性用トイレのドアに頭から突っ込んでいった。あまりにもその突っ込みかたと音が派手だったので、十分衝突と言える。
 自分の名前を呼んだ看護師(だと思う)が駆けつけてきた。
 「立てます。歩けます歩けます」
 いや、歩けてなかった。やはり足がもつれる。
 結局その看護師の華奢な肩を借りて、処置室のベッドに横ばいになった。
 すると受付で見た事務員の女性に「ちょっとごめんね」とひと声かけられたあと前髪をめくられ、額で体温を測った。
 言うて36℃前後だろう。
 「あら…」と事務員といっしょに体温計を覗き込んだ看護師がつぶやいたので、見せてくださいと言おうとしたが、その前に見せつけられた。
 「あら…」自分も鸚鵡返しでついつぶやいた。
 

38.7℃。

 
 どうにもならないまま、処置を施す主治医がやってきたうつ伏せになった自分の足の裏を見て、上半身をくねらせてその様子を眺めた。
 「ああきれいになったねえ」「いいね、いいね」「肉が盛り上がってきて、あとはいらない部分を切り取るだけかな」
  いつもより1/4ほどしかかからない処置。
 しかしそれが終わると、さきほど体温を測った事務員が今度は家庭にある一般的な体温計を持ってきた。「ごめんね、脇にはさんでくれるかな」
 

 40.2℃
 

 体温計は事務員から看護師へ、看護師から主治医へとバトンパスされた
 「入院!」
 主治医はめずらしく声を荒げた。
 このご時世なのだだ。真っ先にコロナを疑われた。
 だが3回に渡るPCR検査の結果、すべて陰性。そばにいただれしもが胸をなでおろした。
 それでも医師の「入院」という決断は覆らない。まあ40℃あればね。
 「あのあの、あの…どれだけの(期間の)入院とかなんてわかんないの承知なんですけど、入院費っておいくらですか?たしかいつかの入院はひと月半で2万円だっらような」
 「んん、まあいつまでかわからないし。でも食費だけだよ」
 「たしかに」
 それから血液検査と尿検査とをした。一応インフルも疑われたが流行るような時期ではないことと、発熱以外の風邪様の症状が出なかったため、培養?にだしたものの、あまり疑われていない。
 そうこうしているうちに連絡を受けた母が着替えやタオルを初めとしたあらゆるものを持ってきてくれた、
 こちらからの要望じゃスマホの充電器、pc・本棚から直感で選んだ歌集3冊(コンビニに生まれ変わってしまっても・僕は短歌で彼女を口説く・春戦争。春原さんのリコーダー・まばたきで消えていくの5冊だった。ご丁寧に付箋付き付きだった)そしてペン、大学ノートだった。

 その晩、それはそれは地獄だった。


40.5℃
 

 そして左足の疼痛。ここ半年~1年近く、せいぜい軽い鎮痛剤の服用で済んでいたのに。
 点滴が右腕に四ヵ所にあるためまともに動かせない体。

 さてこれが初日。いったい原因は?